帰依と茸とバルーン葬と ──存在と無をめぐる三詩型の試み   野村喜和夫

帰依と_野村喜和夫

 
 
 

帰依と茸とバルーン葬と──存在と無をめぐる三詩型の試み  
野村喜和夫

木洩れ陽に
きのこ赦され
まるく在る

ニューハーフは
有・有、有・無
無・無とあり
皆既月食
ワレモコウ咲く

みるべきものはつねに隙間に
ある
或ひは
あらはれる
あれはいつのことだつたらうか
われわれは山に入つていつて
木洩れ陽を浴び
それを恩寵のやうに感じた不思議に
うたれてゐたそのとき
杉の樹間の向かふに
燦然と無意味にも
衣をひるがへす金色の観音像をみた
観音像をみた

なに悩んで脳に闇波打たせてんのさあ始めよう天空バルーン葬

風吹いて模様の同じ皿と牛ならんでいるよ俺らみたいに

ありえない蟻たち乳首をりりのぼる

骨壺のなかにもさくら一二片

帰依します
在ることの底の
鳥の洩れに
在ることの底の
不壊府に
不壊府の
クオークのようなタキオンのような
お坊さんの頭に
帰依します
不壊府のことはわたくしに
色濃く残りわたくしの
発祥の地もそこ
なのです帰依します
わたくしの一人は
腑絵浮へと異化し分化しそのふおん川に
帰依します
ふおん川を上ったり下ったり
それがこがねの波紋とひとつになる時の不思議に
帰依します帰依します
いくつもの舟のまぼろし
死が朝もやに掬いとられたようでもあり
不壊府から浮餌麩への
きりさめにまたちおん沼の夕ぐれに
帰依します
香る力の炉
ざろんざろんな碑に
帰依します帰依します
それとも色紙をふくざつに折り
なかに蠟燭をともして
あおみどろのそこふかな川に浮かべるのでしたから
朝の祈りの玄空時坊に
帰依しますそれからまた
出来事のあおみどろをたたえるところの
うおん府アンひえん庭園
ふっくらの女ひとに
その市場の夜のさかなのような
ほとのこみちに
お母さんは道にたたずみ
おぐらい門に入ろうとしていますからその影に
帰依します帰依します
幼生パオパノラマびゅうびゅうに
浮餌麩から腑絵浮へ
腑絵浮から不壊府へ
少女たちですら小舟を漕いで渡ってゆき
在ることの底の
みなぎり
たぎりに
帰依します

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