


連載9回
深く広く尊いところ
亜久津 歩
Ⅰ
無数の窓を割った
石で 金属バットで
素手で
爪をたてる
指ごと捥げる
極めて諦めが悪かった
あまりにも愚かでよかった
Ⅱ
壊したかったのではなく
壊れたかったのでもない
死にたかったのではなく
忘れてほしいのでもない
愛されたかったのではなく
伝えたいこともない
未完のままでよかった
全てのままがよかった
Ⅲ
、ここは消耗品なんですよ
わたしに潰されたわたしの部位が
健気にもわたしを運ぶ
。なおりませんか
わたしはわたしにさえ
わたしのことばかりだ
、大事につかってあげて
生きたまま明るいところまで
連れてきてくれてありがとう
頽れるまで遊ばせて