



連載第10回 きっと真夜中も
亜久津 歩
1
冬の黄昏だとしても
生身の一歩に変わりはない
尽きるから尊く
失われるから眩いのだが
どうでもいいから続いてくれ
2
椅子から降りる 靴を履く
窓を開けて 吐き戻して
手紙を燃やす
花が咲いたとか
明日があるとか
何ら意味を持たない部屋で
火を 消さなかったこと
ただ 消えなかったこと
3
荷物を下ろしていいという
そろそろやめなさいと
叱られているような気もする
あなたや あなたたちに
許されていたとして
わたしは わたしの軽さを
その余白をよろこべるだろうか
孤独であり 孤独ではない
ひとり という
静けさに満ちていく
わたしはわたしだけのために
ちいさく吠える








