連載第10回 きっと真夜中も 亜久津 歩

連載第10回 きっと真夜中も
亜久津 歩

冬の黄昏だとしても
生身の一歩に変わりはない
尽きるから尊く
失われるから眩いのだが
どうでもいいから続いてくれ

椅子から降りる 靴を履く
窓を開けて 吐き戻して
手紙を燃やす

花が咲いたとか
明日があるとか
何ら意味を持たない部屋で
火を 消さなかったこと
ただ 消えなかったこと

荷物を下ろしていいという
そろそろやめなさいと
叱られているような気もする

あなたや あなたたちに
許されていたとして
わたしは わたしの軽さを
その余白をよろこべるだろうか

孤独であり 孤独ではない
ひとり という
静けさに満ちていく
わたしはわたしだけのために
ちいさく吠える

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