

第11回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門奨励賞受賞連載第5回
浄土
仲原 佳
遠浅の海で
拾う、骨のような鍵
それの凹凸を
何度もなぞるうちに
鍵穴までイメージされて
場所への執着は
消えてしまった
生ぬるい抵抗に足を取られながら
もう必要のない
言葉のいくつかを
埋めておく
使わないままでいた絵葉書の夕陽は
使わないままでいたせいで
沈みかけている
それがどこか
心臓の写像のようで
私はバランスをとろうとする
右目で太陽を見ながら
左目で星を見るように
浮遊感を保ったまま
まま
忘れ去られた衛星が
近づきながら遠ざかる
一番自然な形で
訪れる夜
そんなに寂しくないよ、
と
私は手を握る
ほんとうじゃないでしょう、
と
握り返される
ラピスラズリの花の匂い
目の奥に住み続けている蟲
鍵を持たないでいられることが
唯一の自信で
それ以外は何も信じない
少女でなくなったあとも
青い痣は消えず
母がいないから
自分で代わりに舐めてみる
海の味がした








