無念十句 竹岡一郎
開戦日黄の外套のくづほるる
つひに無益に凍つるか人も原子炉も
先物や太鼓腹にはふくと汁
梳初の茶髪やあはれラブホテル
放射能柊咲けるその香にも
抱きをればだんだんもがき出すむじな
少年は兎飼つてもすぐ死なせ
一月の風赤い森つらぬけり
戦争は人類の父ノーベル忌
氷柱折るまだ刃向かへる戦へる
東都枯るゆふやけ色の象の足
作者紹介
- 竹岡一郎(たけおか・いちろう)
昭和38年8月生れ。平成4年、俳句結社「鷹」入会。平成5年、鷹エッセイ賞。平成7年、鷹新人賞。同年、鷹同人。
平成19年、鷹俳句賞。平成21年、鷹月光集同人。著書 句集「蜂の巣マシンガン」(平成23年9月、ふらんす堂)。