連詩プロジェクト:詩仙「秋思の巻」

  • 投稿日:2011年11月17日
  • カテゴリー:詩仙

堺谷真人

なめらかに魚となりたる秋思かな

岡田ユアン

西の空に
ひと匙の群青をとかして
対流が濃淡を生んでゆく

佐藤弓生

つかのまを紅茶に沈む角砂糖小さきあくびをくり返したり

仲寒蝉

末黒野に瀬戸の欠片か骨片か

カニエ・ナハ

雲のある自画像裸体美人

*1          *2

NOV.17,2011 連詩まわってくる。今日は洋画家の萬(よろず)鉄五郎さん(*1)のお誕生日(126歳)。
代表作は《裸体美人》(*2)でしょうか、美術の教科書にもでてくる、山を背負って横たわる
裸婦の頭上に魄(たま)色の浮雲、赤子めく右手の舞踏。萬さんは花巻の生まれ。私は先日、
渋谷の丘の上から600円の切符で13:00発の銀河鉄道に乗車しました――

枕木の
おびただしい
芒の発光している。

松岡秀明

森の吹く変ホ長調のくちぶえにモビールは夢を語りはじめる

横井理恵

二人称複数となり奔り出す

森川雅美

加えられる果ての
ガラスはやわらかく
こぼれ落ちる
ぶらさがる人が
笑っている休日に
先端だけが痛いほど
奇妙にうずき

山田航

みづうみへかへるいのりの水滴へパスワード再交付を許す

横井理恵

娶らるる羞恥はも女神の裸身

岡田ユアン

ねえ 覚えている
麻布からこぼれる光が
肌に描いた模様
交互に映し合いながら
きまって消えていったじゃない

松岡秀明

密会にモディリアー二の藍(あを)があり窓の向かふは渋谷真昼

堺谷真人

人の名をしるす宿帳花八手

カニエ・ナハ

JAN.5,2012 米女優ダイアン・キートンさんのお誕生日。代表作「アニー・ホール」の中で彼女がうたうジャズ・スタンダード「Seems like old times」(Carmen Lombardo & John Jacob Loeb)―これはAFI(アメリカ映画協会)による「100年の映画主題歌100選」に選ばれています―は、こんな歌(日本語訳は「excite翻訳」にお任せします)。

Seems like old times, having you to walk with 
(昔のように見える、あなたを歩かせること、で)
Seems like old times, having you to talk with
(昔のように見える、あなたを話させること、で)
Just like old times, staying up for hours
(ちょうど何時間も起きる昔のように)
Making dreams come true, doing things we used to do
(作る夢は実現し、行うために私たちが使用したことをします)

山田航

群島にまばらな朝日――鳥たちは持たざるや地震(なゐ)といふ概念

仲寒蝉

春の雷釘箱の釘あふれしめ

森川雅美

鳴るってことか
山脈に連なるは
ふかいふかい穴だ

佐藤弓生

チェロの洞(うろ)ぬるくなりゆくはつなつのいつかただよう海月だったね

堺谷真人

行き暮れて南に低き旱星

森川雅美

走れ
ふくらはぎ
乾燥する
アスファルトに
携帯は未来から
着信する

松岡秀明

なかなおりのかろきキスをし男と男Paraíso(ぱらいそ)駅のひとごみに消ゆ

仲寒蝉

しをらしく美僧に掃かれをる紅葉

岡田ユアン

足先から季節がつたう
六道の庭にすすむと
ナナカマドが波紋をえがく

山田航

実朝の見つめる黒き雲のうへ人は砂塵のごとく踊りぬ

横井理恵

雪兎夢見るは月への出船

カニエ・ナハ


“Ryoanji”「龍安寺」2012年 五線譜にキノコ 25.3×48.3cm

佐藤弓生

いっぽんの傘をさしかけられるたび耳たぶにふるあなた
                          の
                           胞
                               子

横井理恵

髪に触れ「あの…花びら…」と口ごもる

カニエ・ナハ

フランソワ・トリュフォーの映画の中に恋猫が出てきた記憶があるのだけど
どの映画だったかおもいだせない。いちばん最近見なおした
「私のように美しい娘」には、性交するときかならずレーシング・カーの
疾走する音ばかりの入ったレコードをかける男が出てきてミヤーウと疾走する車

フランソワ・トリュフォー映画の中におりミヨレミヨレと鳴くchatte

トリュフォーの映画の中の猫の恋

山田航

タロットの「愚者」何もかも終はるまで始まるふりをして待つてゐろ

堺谷真人

岩鼻も松も夢より朧にて

森川雅美

まぼろしと思えばまぼろしただ
きみのパソコンを打つ指を見詰める
とは1年前の夕暮れだから
眼の内側がどこまでも明るみつづけ
一瞬にひらがなになる打つ文字は
とは1年前の夕暮れだから

佐藤弓生

だからもうこわくないからカーテンをひらいてあれは母さんの声

仲寒蝉

セシウムの降る降る冬の墓原へ

岡田ユアン

水晶群の上でちいさな球を
ころがしている
熱を奪うように その手に
そっと みぞれが落ちても
振りはらうことなく
ころがし続ける

松岡秀明

一昨日(をとつひ)かあるいは去年(こぞ)かことのはが髄(なづき)にはたと舞ひおりたのは

(捌:堀田季何)

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