誰かの、というにはなつかしい 中田 明子

誰かの、というにはなつかしい
中田 明子

近づいてそれからずっとついてくる 抱けばしあわせのごとくよじれる
まだ秋をしらない身体にもう秋は来たことがありその秋の飛び方
てのひらを信じきるすずしさの手がみずにふれわたしにふれてくる 
曇るとき街がわたしが立っているたがいのかたちをあきらかにして
もっと尾にわたしが棲んでいたころの、顔というしずかなみずたまり
ついてしまえば消えることない跡として窓に葉影をつれてゆくバス
風景をいうときに、風 うつむけば黒くなる眸が仰いでひかる
なにいろも載せないままのざらめきに手渡されているまぶしさのこと
ねむったあとも瞼のなかにひらかれてひろがっているまみずのように
いっとうの群れない山羊を曳いてゆく しずかだ、午後を山羊にしながら
こころよりからだよりふかいところなら囲うことのできない私有地 
ペンダントランプの灯りの落ち方とカトラリーならフォーク、冬の溜まり場
ゆうかげを溜める、腫れる冬木々はいつかアンリ・ルソーをおもう
なつかしい死へからだ傾けるときわたしはきっとみずたまりのぞく

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