連作 深層 烏合 衆

連作

深層

烏合 衆

ほらがい

海をひろう
耳にあてるとあの人の声がする

海をひろう
今日は昨日よりも海底色

海をひろう
今もまだあの人が囁いている

あの人にも
私の声が届けばいい
空に近い海をひろって
唇にあてる
太陽に透かせば
私が薄くある

でも
あの人は
何も聞こえないみたい

二人の世界

半袖からなまっちろい肢体が
顔をのぞかせる
じっとりと湿ったうなじを
体の中にあった海が流れ落ちる
地面にできた暗い染みを
私は
踏んだ

こちらを向いて笑いかける
彼に抱くこの感情は
許されない
世界は
受け入れてくれない
ので

私は

彼に手を伸ばした

あなたのための

てをさしのべる
熱を帯びたそれを背中に隠した

ほほえんでみる
頬がひきつった

丁寧な言葉にかえてみる
あなたの瞳がどろりと濁った

私があなたからもらえるのは
澄んだ横顔と
宝石のような瞳と
背表紙をなぞる指先を
ただ見つめる
その幸福だけ

みんなは私が不幸だと
言う

それにこう返すの
「いいえ それは違う
私は幸せなの」

視界は鮮やかな赤で埋まる

烏合 衆 (うごう しゅう) 
2003年生まれ。
小説の設定をよく考えては友人に送り付けている。
ゲームをしていると5時間が飛ぶ。
1週間の平均プレイ時間が12時間を超えたことも。
個人所蔵の本は漫画を含め600冊ほど。

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