月が笑う 黒田 ナオ

月が笑う
                    黒田 ナオ

夜の市場のにぎやかさ
お面をつけた男も女もぞろぞろ歩き
そんな市場の人ごみに
ゆれながら
歌を歌っている女がいて
赤ん坊泣いて
そのたびに乳房ふくらんで
赤ん坊、赤ん坊
母をさがして泣いている
女は夜の市場に行きたくて行きたくて
にぎやかな声と灯りが恋しくて
ふくらむ乳房を
赤ん坊に含ませることもなく
足が無いから
天井をするりとぬけて
瓦屋根もぬけて
するする
浮かびながら夜をいく
するするする
赤ん坊泣くな月赤くなる
赤く熟れる
赤ん坊泣くな乳房ふくらむ
湧き上がる酸っぱい匂い
女は歌う
月夜に歌う
もうすっかり赤ん坊は泣きつかれ
女も歌いつかれて
ゆれる
女がゆれる
月が笑う

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