第11回詩歌トライアスロン三詩型融合部門奨励賞連載第2回  炉のなかでぼくたちは 椎本 阿吽

第11回詩歌トライアスロン三詩型融合部門奨励賞連載第2回
炉のなかでぼくたちは
椎本 阿吽

目を覚ましたぼくの前には
灰が溢れていました
あたりを見渡したらまっ黒で
手を伸ばしてみたら手のひらに
ぺったりとくっつくような黒い鉄で
手のひらを張り付けた時に
空間ができる(土踏まずのような)
ところ以外が黒く汚れて
これは鉄の粉かなと思いました

いえそれは煤ですよ

驚いて
僕は振り返りました
火の小さな粒が
たくさんたくさん集まって
人の形の型抜きみたいになっている
ものが揺らめいていました

ここはどこですか
ロデス

ロデスという国があった気がしないので
首都かと思ったのですが
煤があるし
灰もあったし
そう考えたら多分

なんだと思いました

あなたはなんですか
火です

さすがに火だと思いましたすぐに
それにしてはやけにここは寒々としていました

どうしてここにいるんですか
それはどちらに聞いてますか
ぼくにもあなたにも聞いてます
生まれたからでしょう
生まれるところがこんなに暗いのですか
ほらみてください

伸ばされた手
(あなたはこちらを向いているのかそっぽを向いてるのか)
(分からないのでぼくはその身体に左右を名付けられない)
によってぼくは
照らされました
照らされた光はある程度
ぼくの中に絡まって取り込まれて
そしてある程度はすり抜けていきました
ぼくは半透明でした
(それから僕は少しだけ眠ってしまったようでした)

陽はなべて落下死 それはおとぎばなしのめでたしめでたしくらい確かに
子音だけのひそひそ話を羽毛布団の隙間にぎっしり詰めてねむろう
ブルボンのプチシリーズはいつまでも減ってない気がするよ するよね
リネン室にくしゃくしゃのシーツ おしろいのような香りを生きて放てば
春の星金の画鋲どっちが欲しい
土手沿いのよもぎを千切る叔母さんが
春蜜柑剥いた結果の爪の垢

目を覚ますと火の粒は
歪んで千切れて離れそうになって
を繰り返して
さんざめいていました
狭い炉の中を気にしないで
ひたすらに暴れて
ぼくの体に二つほど
火の粒が絡まってしまいました

幽霊はね
火の粒と素材が同じだから仲良くなれるって
お母さんが言ってたから
仲良くしたいんだけど君と

ああぼくは幽霊なんだって
思ったころが多分
ぼくが幽霊である前の
記憶を繋ぎとめる綱の
繊維の千切れた瞬間だった
からぼくはもう
幽霊であると思っていた
そしてぼくは
目の前にいる火の粒と
仲良くしたかった同じだった
半透明な右手を伸ばすと
火の粒は右手を
(右手と握手ができるのは右手だけだから)
(ぼくはあなたの体に左右を与えられた)
半透明の中に混ぜ込んで
血管に沿うように腕から首のあたりに
小さな粒が体中を這いまわって
私を侵す
それは指を浮かせてくすぐるような
ずるい悦びでした
炉の扉が

っかん
と遅れて開きました
ぼくたちは手を混ぜ合いながら
そこから空を見上げました
半透明の稚魚が
空から落ち泳ぎながら
よだれのように純粋に光って
私たちの周りを排水溝の渦のように
くるくる笑って

蹴りやすい小石を選ぶ私の目には遠い遠い異国の泉
Metamorphose 服を脱ぐとき喝采のように鳴る静電気を丸めてつぶす
苦しみは狼の毛を逆撫でる夜風の途中に預けてみよう
水紋は生まれるときにその円のそとに柔らかい影産んでは消して
ほうれん草切るだけなのに刃の背に手  風船の結び目残る割れた破片
獣交む無言と真顔とその空気  もずく三パックなのに98円  
クレソンを一応フォークで刺してみる  スイバ折る確かに折れた音がする
さえずりの深刻さに目を開けないと  木の芽ひとつ私の指で開きたい

これは現象だから

とあなたは言ってくれたけど
ぼくは祝福だと思ってそれは
不可逆なので
やはりぼくにとって
(あなたにとってもおそらくは)
嬉しいことでした
(それからぼくは眠ってしまいました)
(火の粒が幽霊の生まれたてはそういうものだと)
(後になって教えてくれました)
(ありがとう)

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