「渦」他一篇 柴田 望

「渦」他一篇
柴田 望

知る者が知らない者を裁く
さらに弱い者を叩く
振り子全体が揺らぐ

容認ではなく分裂
七〇年の後継を自負し
変化をもくろみ疲れ
無意味な膠着が
繰り返し記号化される

磁場の形をした羅針盤
核を固定した均衡
ヘブライのカバラの樹木 
岩の原子構造に焼く
緊張に音階は靡く

自然に直線はない
六本を組とするシンボル
六四卦の周易 実と破
六四個の晶が周波化し
制度に疑問を抱き
放射エネルギーを模写した

排除される尊重の
規模を組織化し
自己を濾過し再配列している
地球をとりまく磁場
二重螺旋の果実の報復のずれ
小さな原子 トロイド状の銀河で
大きな腕が神を弔い絶望している

長方形の首都の空白
太陽の紫禁の門を護る
獅子は直線にならない
六四個のベクトル平行体の
虚空を
前足で押さえている

      言
いたいことを
      書
くのではなく
        意味
を悟るのでもなく 
純粋な誤解ではなく 
         言葉
   に至るまでの
         沈黙
   は詩の時間だ

騙されるな 誤解はフェイク
失われるつきまといの 余韻
急には消えず だんだん遠く
いつまでも聴こえて 鳴って
いるのに感じなくなる 距離
は       詩の 訴状だ

世界が平気で変わるのを体験
してきた先輩詩人と 比喩の
恐ろしさを知る若者 通訳の
いない国で育まれた長い空白

土曜と日曜が過ぎ 来るはずの声が来ない
残された私たちが刻む取り返しのつかない 
向き合うことすら許されぬ 記憶は
           詩の許諾だ

他人があなたを責める あなたが私を責める 
私が私を責める 鏡を囲う古い題材 
じつは誰も責めていない 私には敵はいない

 ある日、解約する わざと 撮影させた
記事も消される あんなに人が死んだのを
             ぜんぶ忘れる
   お互いに知られている
   政治 の隙間だ!  
   詩 の居場所だ!

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