連載第3回 最期まである記憶 亜久津 歩

連載第3回 最期まである記憶
亜久津 歩
 

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少し壊していなければ
歩きにくいのはどうしてだろう
透き通るほど良い予後である

健やかな穏やかな午前十時
回収車を待つ食器棚と
金木犀と吸い殻と
運動会のリハーサルを眺める二分
どちらに立つことも
どこへ行くこともできる肌寒さ


窓辺のフェイクグリーンを揺らす
本物の風 本当の秋の夜だ
夢のような月明かりが
安心しきった温かな頰に
睫毛の影を落とす
きみに毛布をかけ直したと
死ぬときに思い出すだろうな


詩を書き直す
線を引き直す
絵を描き直す
色を塗り直す
今を生き直す
歌を巻き戻す
間違いを正す
日々繰り返す
なくならない
何も

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