

第11回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載第2回
両声類のためのマズルカ
nes
刻まれた甘い麒麟のポラリスに異性を演じたい雨の庭
桃を買うことは臓器を刺すことで凍えながら地声をずらすんだ
走者むなしく森に眠って聖歌隊だったら抜歯される地図だね
乱れていく立証と動機、チェロを弾くコーヒーミルは凛として、泣く
虹を渡って歌唱のひとみを鈴蘭に犯されているビニールなのか
主義の問いに空箱は羽化するだろう源泉その未知をくぐるから
Cthughaのエラーコードに法的な林道をさまよっているあなたの小指
汽車の産卵というメイク・アップを走る 無理数の坂道を焼き尽くせ
手芸なら渡したくない蟲と蟲、ほろほろと落ちる無我の報いは
排他的ワルツその後におとずれる秋の腕・秋の糸・秋の古語
昏倒──号泣ののちの細道は皮膚が剥がれて珊瑚礁めく
弓も矢も信号/通知されていくアルカディア/北極を慰めて。
好きな人、あるいはゲオスミンのような玻璃窓に飛ぶ静脈よ静脈よ
マグカップ割れる彼方の鎮静剤を増やして悪癖のカナリアね
月面の枯れあじさいにひたはしる喉仏を潰しなさい 遺書が孵る