
ホログラム
岡崎 弾
迷い込んだ精霊馬が胸のなかで鳴いている
真面目に生きてきたので死んだことにも気づいていない
静かな生活と仏壇の向こうのどんよりした暗がり
そこに広がっているのは君の白いワンピースぐらいで
お母さんのフルーツ缶を開ける音が再会の喜びを歪める
弟は精神安定剤を飲み終えたばかりで
触れられない世界の中で特急電車を待っている
お父さんは私たちをよく抱き締めてくれた
あの静かな心臓のリズムはいつも変わらない
裏庭の映日果が一顆ためらいなく落下した
死ぬときもそんな勇気があればいい
AM2:00を過ぎても私たちはいつも静止していて
突発的に生まれたり死んだりする
青空の額縁に家族写真が一枚
ホログラムみたいな太陽のしたで
私は今日も共同墓地を掃いている