

ダンス
山口 直美
月明り
青い草野に
あなたと
ダンスする
ダンスは
立ったままするセックス
と、
むかし言ったひとがいる
だから、
あなたと
ダンスする
がいこつになった
あなたと
ダンスする
あの日
あなたが姿を消して
どれほどわたしは探したか
曲の合間に拗ねたふりをしてみせる
あなたはわたしの耳を甘噛み
前よりずっと気持ちがいいね
と、欠けた歯と歯をかたかた鳴らす
夜の果て
死の果てまでも
あなたと
わたしは踊りつづける
鎖骨のあたりを風が吹き抜け
あなたは汗をかかない骸骨
うっとりしないからっぽの瞳に
月のひかりが
ゆらゆら揺れる
わたしのヒールは疾うに折れたが
履き替えるのももどかしい
靴を脱ぎ棄て
裸足になって
濡れた足裏でステップを踏む
草が匂う
息が匂う
髪が匂う
月が匂う
遠くで犬の啼く声がする
やがて
人が来て
野に踊る
狂った女を見るだろう
わたしは
踵にからみつく
なみだのような蔓草を
力まかせに引きちぎり
真っ紅なヒールを
買いに出かける







