南瓜  颯木さつきあやこ


南瓜  颯木さつきあやこ

眠れず寝床を抜け出て 
犬小屋の中を覗くと 
絡まった渋茶色の記憶にくるまれて 
死を待つ犬のようなわたしが 
愛をしゃぶっている 
それは かぼちゃのようにも見えた 
 
やさしい黄色の甘い実を 
ゆっくり 煮込んで 
冷たい屍のような悲しみの 
うつろに開いた口に含ませる 
温かく白い湯気が上がる 
煮込む人の やわらかく確かな指先 
 
夜更けの 雨に濡れた石の時間の 
はりさけそうな静けさの ただ中で 
わたしの震えて吃る舌を 
ねっとりと抱擁する かぼちゃ 
明るい灯のように 
黒ずんだ食卓から 
明日を指していた 
 
いくつも坂を越えたけれど 
蔓だらけの道が続き 
五番目の角で 足を取られた 
自分の魂の壺をひっくり返して溺れ 
愛にばかり飢えた野良の一匹となった 
 
そんなふうに町の夢の中を徘徊する孤独も 
黄金色の実は 蜜のようになだめる 
喉を撫で 思い出の横を通り 
奥深く眠りについている雁金を呼び覚ます 
 
窓を破る光の幻を見ながら 
わたしは再び 
すっかり冷えた布団に横たわっている

 

作者紹介

  • 颯木さつきあやこ

2009年 詩と創造奨励賞受賞

同年 詩集『やさしい窓口』土曜美術社出版販売

2012年 詩集『うす青い器は傾く』思潮社

文芸誌「狼」、麻生詩の会、喜和堂参加

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「作品2012年4月27日号」の記事

  

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