(ひとつのひかりの) 森川雅美





(ひとつのひかりの)  森川雅美

ひとつのひかりの根っこに
たどり着くためにほほえむ
えいえんへのほこうは続き
きょう眼をとじるあなたは
雨のぬくもりはこんでいる
よわい足くびはきおくされ
どこまでが生きるかてなの
てんぱく川とよばれている
ささやかな休そくにぼくも
たち止まったとしてもなお
そうあれはまだ幼いひびの
けいしゃをともに歩くとき
おいしげるいら草にきれる
ふいにおとずれる掌にふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょうのため眼ざしが
ゆらゆらとかがやく流れに
うみだされるままにある傷
ふかくせなかにしみる熱を
つむぐ指さきもあるのなら
ややかたむいても影ふんで
こぼれゆくものを掬いとる
すこしだけは忘れることは
よいと鳥のなくこえきこえ
もう終わりのじかんだから
ひとつのひかりの根っこに
ふくすうの指さきもつつむ
いっしゅんおうとつは届き
きょう人ではないあなたは
朝のかがやきひらいている
つむぐ足おとはつうかされ
どこからがほほ笑んでるの
てんぱく川とよばれている
うきあがる裂けめにぼくも
はしにふり返りつつもなお
そう吹きぬけていくひびの
かんせつが淡くゆれるとき
おわれる花ふさすらもどる
ふいにこうたくする雫ふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょうをゆする震えが
きらきらとちりばめる眼に
おきわすれられたままの傷
うしろから啄ばむせなかを
つなぐ足どりがたどるなら
ややかたむいても影ふんで
なつかしい音がいきすぎる
すこしは踏みはずすことは
よいと梢のかがやきはきえ
もうつぎの生すときだから
ひとつのひかりの根っこに
かさねられる掌はほほえむ
えいえんへきざはしは続き
きょう燃えていくあなたは
甘いまなざしはこんでいる
ほそる足さきはきおくされ
どこまでが生きるかてなの
てんぱく川とよばれている
こうさするすい路にぼくも
ふみまよう足のさきもなお
そうあれはまだ幼いひびの
かえりみちおれ曲がるとき
おくから高いいちがくれる
ふいにかたられる石にふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょうのため葉かげが
ゆらゆらとわきだす流れに
うみだされるままにある傷
ふつうのせなかをさす熱を
つつむ反しゃもあるのなら
ややかたむいても影ふんで
こわれいくものを掬いとる
すこしだけは留まることは
よいとからみつく声きこえ
もう終わりのじかんだから
ひとつのひかりの根っこに
ていしょくする足もつつむ
いっしゅんのはれつに届き
きょうは柔らかなあなたは
荒いこうさがひらいている
くずす足どりはつうかされ
どこからがほほ笑んでるの
てんぱく川とよばれている
やむ眼のはしばしにぼくも
くじかれる足であるもなお
そう吹きぬけていくひびの
かざられ道すじになるとき
おしえる脈はくまでもどる
ふいにふきすぎる夢にふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょうをつなぐ怯えが
きらきらとくずれいく眼に
おきわすれられたままの傷
うらがわから剥ぐせなかを
つまづく疲れにたどるなら
ややかたむいても影ふんで
みじかい雨おといきすぎる
すこしは浮きあがることは
よいと眼のざんぞうはきえ
もうつぎの生すときだから
ひとつのひかりの根っこに
よわまる心おんもほほえむ
えいえんへのらくさは続き
きょうに失われるあなたは
雨へおもさをはこんでいる
つづる足さきはきおくされ
どこまでが生きるかてなの
てんぱく川とよばれている
ひきだしの記おくにぼくも
あし滑らせたとしてもなお
そうあれはまだ幼いひびの
めいめいの毛はゆれるとき
おわれるままに肌はきれる
ふいに朽ちいくなぎにふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょうの凝れるうろが
ゆらゆらとつきせぬ流れに
うみだされるままにある傷
やわらぐせなかなでる熱を
つつむ波どうにつづくなら
ややかたむいても影ふんで
こごえゆくものを掬いとる
すこしだけ埋もれることは
よいとひにすける声きこえ
もう終わりのじかんだから
ひとつのひかりの根っこに
ふりかえるま際をもつつむ
いっしゅんのまぶたへ届き
きょう見うしなうあなたは
朝へくるぶしひらいている
きれる足どりはつうかされ
どこからがほほ笑んでるの
てんぱく川とよばれている
ていへんの煌めきにぼくも
さらし忘れたとしてもなお
そう吹きぬけていくひびの
ぬくむくさ原にすわるとき
よわる眼のうらへともどる
ふいに重なるおもみにふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょうをつなぐ震えが
きらきらとつむがれる眼に
おきわすれられたままの傷
うごに生えそめるせなかを
ちいさな瘤までたどるなら
ややかたむいても影ふんで
わらう顔たちがいきすぎる
すこしは遅れていくことは
よいとあるくさき道はきえ
もうつぎの生すときだから
ひとつのひかりの根っこに
まだ躓いたままにほほえむ
えいえんへのほこうは続き
きょう偏ざいするあなたは
甘いくちはをはこんでいる
わたす足さきはきおくされ
どこまでが生きるかてなの
てんぱく川とよばれている
すり切れるこまくにぼくも
うすく剥がれなくてもなお
そうあれはまだ幼いひびの
うもれるだんさに止るとき
おとずれる端ばしがきれる
ふいにささくれる土にふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょうのかたい継ぎが
ゆらゆらとこぼれる流れに
うみだされるままにある傷
とけはじめるせなかの熱を
つつむこうていに立つなら
ややかたむいても影ふんで
はじめのしずくを掬いとる
すこしだけは消えることは
よいととおい雨おときこえ
もう終わりのじかんだから
ひとつのひかりの根っこに
わすれられた背をもつつむ
いっしゅんおうとつは届き
きょう遠くあるくあなたは
荒いみちかけひらいている
もどる足どりはつうかされ
どこからがほほ笑んでるの
てんぱく川とよばれている
ささやかな休そくにぼくも
ひと息ついたとしてもなお
そう吹きぬけていくひびの
ごくちいさな皺になるとき
おおおきな脈はくにもどる
ふいにきれるあれ野にふれ
こんなに小さくなったよね
こんじょう兆すよろめきが
きらきらとうきしずむ眼に
おきわすれられたままの傷
たどれないび熱のせなかを
ゆびさきの力はたどるなら
ややかたむいても影ふんで
しらないは紋がいきすぎる
すこしは朽ちていくことは
よいときょうの日びはきえ
もうつぎの生すときだから

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