邂逅 岡田ユアン


邂逅 岡田ユアン

ぬかるんだ夜の中へわけいる
窓が風を招いたすきに
港から汽笛が聞こえた
それは水先人のように
刻の交代を告げる
 
元素は素直に刻の声を聞く
私はゆるみ 輪郭をとかし
ほんの少しばかり体積を減らす
 
夜のあいだは
書きかけている手紙の
次の言葉を故意に探す必要はない
ただ鼓動を感じ
身体の定律に耳をかたむける
 
束縛のない発話を夢見て目を閉じると
子供の頃に見た夢が映る
 
青黒い海の中をシロナガスクジラがのけぞり
光がとどく水面へ浮上してゆく
それは果てない浮上
私は漂いながら
シロナガスクジラを見ている
 
海はあまりに深淵だった
寡黙で
全てを許容する安寧は
恐怖と等しい
 
風が産毛をなでる
馴染んだ重力が
別の景色へおろす

タグ: None

      
                  

「作品 2011年9月2日号」の記事

  

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress