一月一家   石川美南

一月一家   石川美南

昨日今日つづく怒りのふつふつと煮えてふつつか者のわたくし

くし切りの南瓜を口にはめながら長い昼餉の母娘の会話

弟はますます白熊めいてきて白熊の手に手巻き寿司あり

束の間の帰省よ(あの子立つたままずつと酢めしを扇いでゐたわ)

粗大ごみ回収車狭い路地へ来てその場で砕く三脚の椅子

北風は吹いて途切れて誰ひとり当たらなかつたイントロクイズ

本物の草だと先に目が気づき、すこし遅れて手が触れにゆく

尾根道に温かな石 手術後の経緯つぶさに語りつつ笑む

寒き夜の傘立てにして念入りに確かめてゐる鍵のあけかた

その舌で舐めてもよいぞ 丘に立つ塩の柱は風雨に強い

作者紹介

  • 石川美南(いしかわ・みな)

1980年生まれ。短歌同人誌poolおよび[sai]のほか、さまよえる歌人の会などに参加。橋目侑季と共に「山羊の木」としても活動中。2011年、双子の歌集『裏島』『離れ島』(本阿弥書店)を上梓。

「山羊の木」

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「作品2012年2月3日号」の記事

  

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