

第11回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門奨励賞受賞連載3回
青い夜へと
仲原 佳
無数の気配 無数の足跡 寡黙なる雪道をゆく自我を消しつつ
しりとりの言葉と言葉を接いでゆく窒息しそうな白さの中で
鳥瞰図 ぼくもあなたも冬山の取るに足らない一角となる
声(こおりの生まれる)、それを踏み抜けばぼくらは落ちる青い夜へと
たかが言葉、たかが命さ 夜という地球の影に吞まれていきぬ
ストロボがまぶしい、象の両の眼に刺さったままの氷のかけら
ダーウィンのアンチテーゼだアラスカの男と犬の本を燃やせば
瘡蓋のようだと月のことを言う火を見て以来傷ある人の眼
遠からず衰える声ふゆの詩をひとつふたつと諳んじたなら
きみを燃やしたあとには墨が残されて(おやすみ)雪によく似た匂い
地球照 千年後にはぼくたちのこころは近づくのか、それとも
きみは塩のようなささいな感情を抱き留まるねむりの岸辺