色彩論 中家 菜津子

色彩論

中家 菜津子

はつなつのミントのソープ泡立てる 碇を降ろしたままの心で 

舌先の神経に落雷はあり白錠を飲む水が飲めない

鬱々とした深緑美しく蝕まれた葉を摘めないでいる

サーカス

鞭打たれる馬の瞳の幾万の人間の貌灼け落ちてゆく

三片が欠けたアニスの欠けた箇所 指で触れてる見えないけれど

手のひらの青いレモンも来世には鳥か魚か当ててごらんよ

検索は得意なわたしと地図を読む君とで見つけたジャカランダの樹

松の葉の隙間に裂かれた月光があなたの(せな)でなだらかになる

王子駅

車窓には紫陽花あじさい連なって全ての線が紫がかる

「雨の密度がとても濃くって水中で肺呼吸する生きもの僕らは」

数千の短冊濡らす雨数多 太陽暦の七夕だから

短冊を離れた文字がそこかしこ珊瑚の産卵みたいに漂う

夏鳥のつがいが沼を目覚めさせ波紋は蓮の花へと伝う

sand beige

暗闇に浮かぶ真砂の雲や霧 真実、宇宙は青くはなくて

日本語も操れなくて出鱈目なダンスを踊るのにつきあって

青い壜がよかった君と歩くなら青い壜を片手に歩く

誤謬なく矛盾するのが君だから雨冠をかぶった火の鳥

口角を上げる表面、レイヤーの最も深い場所には宇宙

三日月はペーパーナイフ くちびるのつくる沈黙すこし破いて

エイリアンだったあなたはこの国で母国の意味を曖昧にする

朝摘みのレタスサンドを透明な予感を帯びたラップで包む

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