夏季通行証 早月 くら

夏季通行証
早月 くら

とおくから止まない声をどうしてかわたし宛てだとわかる 薄明
廃屋にノウゼンカズラのふきこぼれ かなしみをかなしみとして貸す
微熱/微笑 ずっとここにはいられないことに祭壇かたむいてゆく
一冊を夏の手本に選ぶとき従えて、針葉樹林たち
責めてね 行き先をまたまちがえて夜の鍵穴へと溜まる夜
天体望遠鏡へ火をつぎたしてふたりは有名な夢のなか
指紋ありますか、と問われてこの街のあらゆる花瓶にふれてまわった
橋をひとつ渡らなくてはなまぬるい豪雨がまばたきをするうちに

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