

川柳 関節を外しコンテナ船に乗る
笠嶋 恵美子
観世音菩薩の声が降る夜明け
コンニャクの花が咲いてもまだ眠い
さよならをするには早いとんびの輪
ビニールの胸にも滾るものがある
羽化始まる春の野山を貸し切って
ぴったりと踵をつけて踊る蛸
揺れながら切り取り線の上にいる
鎖骨の池にも睡蓮が咲くやがて
ピータンになりそこなった青い月
丁寧に輪郭を消す私小説
一頁ごとに波音高くなる
口笛はまだ届かない北の窓
四時からの仮面ぬめりを増してくる
蝉のおしっこあるいは処刑台の露
AIに踊らされてるエッフェル塔
線描の薔薇はにこりともしない
満杯になるともだえだす金庫
ぐりとぐらの奥歯よボクを見捨てるな
裏声で氷の壁を崩している
鯨閉経雲と流れていく余生