草を枯らす   大石直孝

草を枯らす   大石直孝

性的なくちづけをしていできたりそののちは銀杏の葉をちらすのみ

なにか熱をはらんだものが降るやうな気配して窓に貼れるてのひら

端的に人を思へば黙しけりうづたかく雑炊の冷えたる鍋に

丸顔の関悦史ゐてそのとなり榮猿丸はほれぼれと長身

(よ)さんが田中庸介としてゐるうちに詩の定型の定義を質す

にんじんの葉の天ぷらの苦さゆゑ口づけはせず俳句男子に

にんげんのことばのうろが浮かび上がり歳晩の月蝕の冷温停止

一万人の第九と一万人の歌丸を幻視せよ雨に

茸くたびれ言ひ訳はもう尽きてゐる鍋鍋底抜け誰もたれも底抜け

妻の牛乳ぬすんで恋人に会ひにゆくかかるおろかしき生を願へり

雪降り積み人のとほきに雪降り積みこの丘にわれは草を枯らすも

三月はまたくるはずだ火を焚いていつまでも終らないしりとり

作者紹介

  • 大石直孝(おおいし・なおたか)

1966年長崎県生まれ。「星座の会」会員。

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「作品 2011年12月30日号」の記事

  

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