アムネジア 松野志保

アムネジア 松野志保

風を斬り風に斬られてなおも飛ぶ一羽よお前は死後もハヤブサ

少しだけ血の混じる水 薔薇であることを忘れてしまった薔薇に

万緑の中みずからを点景となすため開く白いパラソル

かげを交互にくぐるバス みんな口に真珠を含んで静か

指に刺すからたちの棘これ以上こころ傾くことを怖れて

暮れてゆく琥珀茶房の窓辺にてユルスナールはわたしの従姉妹

夕立に少しふやけて約束になりそこなった一枚の地図

はりはりと氷踏みつつ蹄あるものとこの夜の果ての岸まで

水でないものをたたえた湖のおもて震わすための音叉を

夜も実を落とす林檎の樹の下にいいえ、わたしはいませんでした

タグ: None

      
                  

「作品 2011年7月29日号」の記事

  

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress