大道大乗歩行―芸能芸術起信考― 【二】
闇と釦 男波弘志
六月の闇には臍のなかりけり
船虫や膝の裏にも闇溜り
影法師溜りにたまる蛇の衣
とぐろ巻いて碧い釦のやうな蛇
野の窪に蛇も聖も溜りけり
泰山木の花より黒い釦受く
赤ン坊は闇の塊り砂糖水
どれも違ふ釦が鳴つて大西日
八月の野壺に溜る影法師
夕焼くる野づらに置いてきし影も
八月の吾を出てゆく影法師
野の果の蛇か聖か突つ立ちぬ
執筆者紹介
- 男波弘志(おなみ・ひろし)
昭和41年(1966) 真冬 出生
北澤瑞史 創刊 俳誌「季」 元会員
岡井省二 創刊 俳誌「槐」 元同人
永田耕衣 創刊 俳誌「琴座」マンの会 元会員
現在 俳誌「里」 同人
既刊句集 『阿字』(田工房)
合同句集 『超新撰21』(邑書林)に入集