蘂と顔   小原奈実 « 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト

蘂と顔   小原奈実

蘂と顔   小原奈実

空のくち享けたるごとき水紋のひらきつつゆくひとつあめんぼ

虻の胴突如浮きをり初夏の眼にみえゐるものはすくなけれども

曇天はけぢめなく暮れ路ごとに樹のはなどきの憶えある街

室内の像の彩度をつよめゆく窓よカーテン引きて夜とせり

飲食おんじきはふかしぎの滝淵ふかく投ぐるたび身は濡れてながらふ

鏡ありきちかぢかとみてみづからの顔に黒子を見出でて泣きし

海老の出しぬ 医学はここのこのひとりが癌になるかを言はず

睫毛ほどちひさき針の時計にてくるしきときは己が脈とる

百合に蘂、生者には顔 空間に掲げて何のおとなひ待たむ

ほんたうにこの世は五月さへづりのそれぞれに聴く梢のたかさ

作者紹介

小原奈実(おばら・なみ)一九九一年東京生まれ。東京大学本郷短歌会所属。

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