今回の合作実験は週刊俳句のSST特集企画に付随して行なわれたツイッター上の座談会「SST、80年代を語る」から始まっている。
連句ではなく、独立した複数の句を特定の作者個人に直結しない形で制作すること。ただしシュルレアリスムの自動記述や、上五・中七・下五を無作為に組み合わせるだけの天狗俳諧のような形でではなく、バンド活動における作・編曲のように一応の統御がなされ、しかもそこから3人の誰でもない人格のようなものが出てくることが望ましい。
そのために取られた方法はこのようなものだ(以下、実際の制作時に関が他の2人に回した文面)。
(一)各自まず10句ほど叩き台となる句を作る。
この段階ではモチーフさえわかれば五七五になっているだけでもいいなっていなくてもいい。
音楽でいえばリズムパターンやコード進行、サビのフレーズとかがわかるだけでも。
(二)それぞれの10句を次の人に回す。
受け取った人は「添削」ではなく、自由に自分がよいと思う方向へ句を作り変え、作り込む。
そしてそれを3人目に回す。どういう句をどう変えたかとかは知らせない。
(三)3人目も同じ作業をし、次の人に回す。
これで一巡して句は最初の発案者の手元に帰ってくることになる。
発案者は他の2人によるアレンジを経た10句をさらに作り変え、最終的に発表可能な完成形にする(作りかえる必要がないと思えばそのまま通しても可)。
……というのをやると、「メンバーの誰それ作曲/SST編曲」みたいな作品が30句ばかり出来る勘定になります。
今回は榮猿丸→関悦史→鴇田智哉→榮猿丸という方向で作品が回され、30句出揃ったものを関が配列した。
途中に東日本大震災が挟まり、長く中断期間が入った。
制作が始まったのは2011年2月28日、終わったのが2011年5月11日だった。
参加者プロフィール
- 榮 猿丸(さかえ・さるまる)
1968年、東京都生まれ。2000年、「澤」入会、小澤實に師事。2004年、澤新人賞、2010年、澤特別作品賞受賞。現在「澤」編集長、俳人協会会員。共著『セレクション俳人プラス 超新撰21』(邑書林)。
- 関 悦史(せき・えつし)
1969年、茨城県生まれ。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞、第11回俳句界評論賞受賞。「豈」同人。共著『新撰21』『超新撰21』(邑書林)。
ホームページ http://etushinoheya.web.fc2.com/(管理人は別人)
ブログ http://kanchu-haiku.typepad.jp/blog/
- 鴇田智哉(ときた・ともや)
1969年木更津生まれ。第16回(2001年)俳句研究賞受賞、第29回(2005年)俳人協会新人賞受賞。句集に『こゑふたつ』。「雲」編集長。
芽キャベツのうつらうつらと踊りくる SST : spica - 俳句ウェブマガジン -
on 5月 22nd, 2011
@ :
[…] 猿丸、関悦史、鴇田智哉)による合作実験だ。具体的な方法は、関悦史による解題にある。 […]
5月20日号 後記 | 詩客 SHIKAKU
on 5月 24th, 2011
@ :
[…] 作品は今回、二本立てです。そのうち男波弘志さんは、これを第一回として以後、月いちペースで作品を連載してくださることになりました。もうひとつは、SST(榮猿丸+関悦史+鴇田智哉)による実験作品。どこがどう実験かについては、関さんによる解題をお読み願います。しかし、この二本立ては嬉しい。これにて現俳句界の最も活きのいいアラフォー作者四人の顔が揃ったからです。お楽しみください。(TR) […]
俳句時評 第5回(山田耕司) | 詩客 SHIKAKU
on 5月 31st, 2011
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[…] 詳しくは関悦史の解題をご覧いただきたい。<3人の誰でもない人格のようなもの>を招来しようとする試みは、近代的な「個人」をこそ方法の拠点とする高柳重信の思想と対置してみ […]
kakumi
on 10月 15th, 2011
@ :
大変面白い試みですね。かくして人格は消えネットの社会を泳ぎだす。子供の頃「何時・どこで・誰と誰が・何をした」と言う短冊をちぎってシャッフルして面白がっていました。いいね。