コーティング   荒川純子

コーティング   荒川純子

私は変わった
鉄の爪、針の髪、氷の唇
私は色を持たなくなり温度も忘れた
重たい肉体をそのままに
私は求めることをやめた
 
私を剥がしていい
固い皮膚をめくりあなたがたの必要になる
私の気がすむまで私を与えて
こわれてもいい
あなたがたの進むべき方向に前進できるなら
時に私は食べ物になり
私は貨幣になる
 
道具や装備にもなれる
あなたがたのために
私は変わることができる
たとえ私でいたことを忘れても
そのほうがずっと幸せだと思うから
 
それで十分
あなたがたとともになれるなら
最後の一片になるまで
私を差し出す
茶色の瞳、穴のあいた耳たぶ、閉じられた臍
 
私でない私になった
誰と判断できないよう
違うものに私は変わった
もうわからない
誰にもわからない
私にも

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One Response to “コーティング   荒川純子”


  1. 網野杏子
    on 12月 12th, 2011
    @

    接点がなかったため久しぶりに荒川さんの詩を拝見した。嬉しい。やはりそれが一番に来る。

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