饕餮前夜 高島裕

饕餮前夜 高島裕 1
饕餮前夜 高島裕 2


饕餮前夜 高島裕

義歯いればしてレーズンパンをむ人よ、あなたを旅の入口とする。

鮮紅のコム•デ•ギャルソン、雨降れば雨のしづくも窓につやめく

Dデヴィッド•リンチ上映会は繭の中、爆笑のたび闇に吐く糸

参道のごとき小路の奥の奥、ほのかに灯る酒場に入りぬ

昼過ぎの三月書房、ふくろふまなこひしめく書棚•天井

むせかへる太古の生命いのち、青銅のおもてびつしり饕餮たうてつが棲む

青銅の祭器は鈍く輝けり、幾万のを捧げられけむ

文明の夜明けの庭にうづたかく積み上げられし鼻を思へり

しなびたる食堂のままであることの(絶品の鯖!)なんと贅沢

くつ脱いで石に乗せたる両足のかたはらを行く水の清さよ

泥泥泥泥泥泥泥泥泥泥かみがもようちえんうんどうかい

歩かせてごめんね東本願寺西本願寺もう日が暮れる


作者紹介

高島裕(たかしま・ゆたか)

1967(昭和42)年、富山県生まれ。1995年上京、短歌を始める。第一歌集『旧制度』(1999年、ながらみ書房刊)にてながらみ書房出版賞受賞。帰郷後2004年より、個人誌『文机』発行。

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