月の神様    松尾唯花

  • 投稿日:2019年11月02日
  • カテゴリー:短歌

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月の神様    松尾唯花

大人って難しそうでかんたんだ 支柱を逸れる朝顔の蔓
流星にぜんぶ聞かれていればいいどこかで流れているはずの星
運命も生活も影 キッチンに読みかけの本あり、息を継ぐ
逆光のなかにあなたを探しおり 遠雷、届かなさ、俄雨
花は死のいちばん近くにあるからね手折られかけてそのままのゆり
怯え わたしの胸底の住みよさに応えるように震えるひかり
何を捨て何を抱くのかスカートの裾のほつれを弛ませたまま
薄曇り 見えないことは見ることで、浅い呼吸をする十三夜
小夜嵐取りこぼされし階段に夏を抱えて眠るどんぐり
酸化するわたしの鱗さらされて街は日暮れを受け入れてゆく
あげたいよ 花火の熱も焦げかけの夏の名残もまだ胸のうち
無為を知るときのひかりのあたたかさ月には月の神様がいて

松尾 唯花
1991年、鹿児島県生まれ。
「ポトナム」同人。短歌同人誌「遠泳」で泳いでいます。

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