きみを嫌いな奴はクズだよ 木下龍也
青空の亀裂のように立っている丘陵の木は葉を落とされて
夕暮れのギターケースに投げ入れるあしたこわれる国の札束
海鳥に神はほほえむいくつもの潜水艇を胸に沈めて
死神の死角で眠れ弟よ愛と吸入器は忘れるな
天使に声変わりはない 少年はそう告げられて喉を焼き切る
「神様にやめとけよって言われたろ、子どもってすぐマジになるから」
山火事は好きかいアダムよく見てろ燃え残る木でイブが寝ている
あとがきに「ぼくを嫌いな奴はクズだよ」と書き足すイエス・キリスト
ひびとして君の過失を見せているすべての窓を割ってあげよう
人類が0へと着地する冬の夕日を鳥は詩にするだろう
作者紹介
- 木下龍也(きのした たつや)
1988年山口県生まれ。2011年より作歌を開始。
2013年に第一歌集『つむじ風、ここにあります』(書肆侃侃房)を上梓。