パレルゴン 斎藤秀雄
胸を日が通るまひるの水煙草けむりは鳥のわたばねならで
太陽の屯する闇深くして木の音楽を鳴らす木の脈
わがみいる偽の鏡やなぐわしき桃の遊びを前線にせん
むらさきを雨にまとえるいもうとよ虫が鳥狩る島にて眠れ
蛇口なる馬ゆ流るる硝子体むごき客土ぞ砂じめりせる
海底の塔の振り子の残像の顔や微笑の口のみ残し
柱なす声のみずかね恋えるわが耳の祠をあふるる腐肉
さやぐ毛のつね焦げ臭し腕生みの母は母なる水をわずらう
旅人を栞れば白きみずうみよ苦しみ深くしわ寄る火なれ
折る紙の谿おりてゆく兄の指夢の着岸なき海霧はも