秋の水泳
道券 はな
木犀のこぼれた花を跨ぎ越すこころを弓なりに撓ませて
自らの葉影を浴びて街路樹はあおい悶えのただなかにいる
あなうらに蹴られた水が隆起して後ろの水に溶けてゆくまで
蹴伸びとは冷えた隔絶 頭上には現世のひかりが揺れている
感情にやや大袈裟な遠近をつけて歩めば鶏頭の道
し損ねたことの幾つかアパートの壁に芙蓉の影は震えて
夕闇をかたく拒んで藪枯すべて意味から暮れてゆくのに
表情の源泉ほのとひからせてあなたはゆび先の米を食む
あなたという湿度の高い街がありそこで汗ばむだけの私
秋の夜のエクリチュールという響き光沢があるから言いなおす