連載第5回
涙・他四編
鈴木 康太
涙
部屋を
丸く
掃きながら
思い出します
思い出、します
わたしは
雨
気づかないふりを
します、ので
こわがらないで
※
丘
裂目のなかに
いろんな靴がありました
そのなかにはあなたの履いていた
靴もありました
靴には紐がついていて
私は歴史を
思い出しました
星空
積もうが
埋めようが
変わらない花束
※
プールサイド
春係、夏係、秋係、冬係
始発係、終点係
変化できなくなっている
でも
光りのなかの背泳ぎ
側溝のこわれた宇宙
※
転校生
あなたは
余分にはしゃいだりすることはしないのでした。
だから花火になっても
手を繋ぐことをやめない
※
涙
丸めたティッシュを
一枚ずつ広げていくと
そこから
ちいさな粒子がひとつ
立ち上がって
おしりを見せながら
走り去っていった