駅 髙木敏次
二人分であるから
サラダが終わり
正気なのか
老婦人が前に
人形に似て
私が座っている
忘れられ見えるものは
窓越しに大袈裟になっていく
切符は戻らない
人形が私を見つめているのだから
老婦人は見向きもしない
駅に着いても
誰も降りてこない
行き先など知らない
早く着きすぎたのだ
乗り遅れたのか
降りてきたのか
老婦人に手を振っている
ゆっくりと出発するなら
驚くこともない
特徴のない改札へ
切符を落としたのか
気づいたときには
私などいない