ズンダダ ズンタカ   今野 和代

ズンダダ ズンタカ   今野 和代


二〇二二年二月二十四日
いや もっと前から
ひとりの男が
国家の帽子をかぶって
容赦ない暗喩と論理と欲望で
ズンダダ ズンタカ 小さな国の 今日を 明日を 
昨日を 遠い昔を 生まれたての 今を
空を 公園を 劇場を 学校を 街を 麦畑を
川を 運河を 病院を 教会を 郵便局を 糸杉を
サーカス小屋を ベンチを 赤松の森を
瓦礫に変えた
廃墟に変えた
神様 眠りこけて 不条理の 固まりになってしまっている 神さま
赤ちゃんアンジェリカ 息絶えた 
殺された
年老いたポール 爆死 
殺された
パン屋のジョナス 圧死 
殺された
花屋のペローを
妊婦イリナを
アコーディオンひきのドチェックを
車椅子のミリカを
泣き虫セレナを 
孝行息子のポールを 
陽気なカーチャを
即死させた 殺した
そのミサイルの銃弾を
渡り鳥に   
変えて
その戦闘機を  
コンドルに
軍艦を  
花電車に
戦車を 
手回しオルガンに
機関銃を 
花束に 
ワインボトルに
変えて
神様 眠りこけて 不条理のかたまりに 
硬直の 石くれに 達磨になってしまった 神さま
起きて 目を醒まして 
ジュリアがうたう 子守歌を 爆音で消さんといて
アレックスとマリアの 熱い抱擁を
道化師ダニエルの おどけたムーンウォークを
奪わんといて  つぶさんといて 
死んだロシアの兵士アレクセイの 母さんの背中
やさしく 撫でてあげて
死んだウクライナの兵士 ポールの開いたマブタを
今 すぐ 閉じてあげて
死んだロシアの兵士 ニコライの子供の 小さな手
つつんであげて
死んだウクライナの兵士マークの妹 セレナの嗚咽
神様 どうしたげれる? 
死んだロシアの兵士 ステパンの妻の絶叫
抱きしめてあげて
ズンダダ ズンタカを もう 止めて
神様 眠りこけてる 神さま
子供を亡くした
夫を亡くした
父を亡くした
難民の人たちの
影がゆがんで ゆらめいて
春の空に
晒されている
私のなかで
空白ばっかり
ザラザラばっかり
生まれてくるよ
神様 眠りこけてる 神さま
起きて 今 すぐ 
ズンダダ ズンタカを
止めて

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