浮上して 木内 縉太
浮上して鯨はうすらまなこなり
木枯やつけまつげ浮く洗面器
犬にひとかかへの落葉降らしやる
揃へられ片脚の折れたるブーツ
息かけて窓のオリオン曇らしむ
沖あひの雨しづかなる冬日かな
鏡中の凍蝿も跳ね返へさるる
鮪の目抜かるるや刃を回し入れ
絨毯に緋の獅子狩れる紺の騎士
戻り来し犬身を振るや雪散らし
■略歴
木内縉太(きのうちしんた)
1994年 徳島県鳴門市生
2017年 澤俳句会入会
2021年 第八回澤特別作品賞準賞受賞
2022年 第二十二回澤新人賞受賞