石壺のある平原 岡本啓
耳はかけ、目はしぼむ
とうとう黙りこむ
ここのつ、とお…… 幼い声
背丈をこえる石壺へ
とつとつと影
無遠慮に訪れた、祈りも忘れた手のひらだけど
石の肌を、たたいて、たたいて
空洞こそ
はきはきと巨きなひびき
「言葉をもらったから、黙っていてもにぎやか
にぎやかに死ぬでしょう」
紀元前から坐りこみ
文字ももたず、身重のまま 花粉にこすれ
ほのかに赤らみ
ふいにあびる空爆のまくら
陽射しにほころぶふるい衣裳
ああどなたふたりの婚礼ですか
わたしたちです
はるばるようこそ
やわらかな風 不自由な呼吸をたてて
たたく
手をとめる
シェンクワン
草なびき いまはきはきと
またなにか