救済 荒川純子
その男は恩人
私に手を差し伸べてくれた
与えたのは機会と勇気と新しい方向
狭く規律の正しい世界で
表と裏を使い分ける術を身につけてしまった
安売りし見下すもうひとりの私を盾にして
投げやりな自分を
どうでもよかった
なんでもよかった
ただつまらなくて
悲しくて
理由もなく月日が経ち
何も残らず年月が過ぎ
最終電車のボックス席にワンカップ
煙草の臭いの会社員の中
窓に映る自分
飛び乗って走った息を切らした私
何もノコラナイ
私をオボエテナイ
名前もワカラナイ
そんな自分を操って
偽っていたとも気がつかないで
どうでもいい世界からの救出
多くは望まずそれだけで良かった
引きずりだしてくれた
あなたは恩人
一緒に過ごすこと
恩を私の一生で返す
