連載11回
花ごと
横山 黒鍵
きれいな六角をえがきながら
消えていった
二つ折りだから
雪はしずかなのだった
ひとりではさびしいから
くっつきたがりの結晶は
あんなにも尖っていて
二つ折りだから
手紙にしかならない
火箭が幾本かよぎり
河の渡しは雪のなかでていった
くっつき違(たが)り
しらない言葉だけしらなければ
りんかくを結ぶ事もない
皺が増えたね
耳も遠くなった
目が
透き通るようになった
きらきらひかる
子供に戻った頼りない足で
雪へと沈んでいく
六花を手向けて
ちぎれた釦が
しんと雪にきえていくのを
ただみている
途端に弾ける
緋や山吹の階段
陽が戻ってくるまで
かくれんぼしましょう
あなたは太陽の子だった
そうなるように名付けた
背負われながら
大根を洗う細い川に
弟が流されていく
わらったかおのまま
みどろはみどりのあしあとを残す
遠くで
踏切がとじた
やまのひとだから
やまはきらいで
海のひとといっしょになったから
うみがきらいになった
波の花が舞う頃
海沿いを北へ
とてもとても遠い北へ
透明になった目で
ぼろぼろの皮を被り
足には鮭の革で作ったはきもの
にかわを煮出した鍋の
なまくさいにおい
かんじきのいる場所なんです
黒く汚れたしわくちゃの手で
編む
掛け違ったままの釦は
ついぞ見つからなかった
だから
弟の流れた国へ
徒歩で
いま
きれいな六角をえがきながら
おちる 雪
手紙の燃えかすが
さむそうにくずれる