ベェちゃん、元気かよ  金子鉄夫


ベェちゃん、元気かよ 2
ベェちゃん、元気かよ 3


最後に吐かれた犬たちは
ツルツルに生育していて
(まるでそっくりだ)
異なった語を腫らし
逃げてゆく午前四時きっかり
僕は身、ひらいて
裡から恥ずかしい火は滲んで
奪われていなければならない
わめけるうたなんてない、こんなときに
ないっ、なんてさすがに言わないよ、ベェちゃん
うらがえしては曝す業に蠕動するビートの下痢
ついに黙ってしまった
デジタルに熟れた街道
に沿って
耳なしのままでいつまでもじゅくじゅくさせて
しゃぶっていたかったな、ベェちゃん
(どうせくるうぅんだよね、くるうぅんだよね)
ビリビリのまなざしへ
どうやらこの街道は続かないみたいで
ブクブクにデブったゆめの文末に舞う
いちまいの虹色、びらびら
(吐かないよ、もう吐けないよ)
くびすじを這い上がってくる暗喩
いっぴきいっぴき丁寧につぶして
みどりに落ちてしまった日々の襟足を
いまさらに馳せてどうなるんだよ
終わりかもしれないからって、ベェちゃん
よだれをたらせば
ドロって
ドロってこの街道から消えてしまうみたいで
あわない今日の膚が不愉快だねぇ
藁のようにとりあえずは笑ってみる
僕の股の下のマンホール
から懐かしい手首
が握っている狼藉
すべてが速度をあきらめた実話
(どうせ、くるうぅんだよね?くるうぅんだよね?)
ひかえめに鳴らしてついてくる暗黙のサルめぇ
吠えはしないんだろう、吠えれないんだろう
いくつものナマなたましいが
眼球だけを病みながらどぶどろのダンス
を生きてゆく街道さ
さびしくひらいた身、のにおいがせまって
くさいんだ、さっきからくさいんだよ、ベェちゃん
うつくしく折られてゆく角材たちの声が
おやすみっ、おやすみって
どうにでもなればいい
何ひとつ輝かない夜空のした
僕はもう吐けなくて
くろい脈にもうじききつく縛られ
また塗りたくった朝にまぎれてしまうが、べぇちゃん
ところでおまえはどこにいっちゃったんだよ
ベェちゃん、おまえは元気かよ

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