大道大乗歩行―芸能芸術起信考― 【四】         荒筵の花伝書  男波弘志


申楽(さるがく)を泉の底で習ひけり

せぬ花の翁の前を蜘蛛の糸

夕螢鉄(かな)輪(わ)づたひを歩きをり

空蝉のどこからも空流れ入る

一歩づつ土になりゆく踊かな

骨骸の面に巣くふ夜鷹かな

濡れてゐず泉の底で死ぬ鳥は

姿見ごと運ばれてゆく晩夏かな

小面の裏の唇うごきけり

落ちてゐてはならぬ小鳥やシテ柱

直面(ひためん)の木の実一個として存す

橡の実の記憶を振つてをりにけり

おもしろうなつてはならぬ茄子かな

執筆者紹介

  • 男波弘志(おなみ・ひろし)

昭和41年(1966) 真冬 出生
北澤瑞史 創刊 俳誌「季」 元会員
岡井省二 創刊 俳誌「槐」 元同人
永田耕衣 創刊 俳誌「琴座」マンの会 元会員
現在 俳誌「里」 同人
既刊句集 『阿字』(田工房)
合同句集 『超新撰21』(邑書林)に入集

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