すすき原 渋川京子
すすき原ぱちんと乳房閉じにけり
息づかい洩らすな花野蹤いてくる
秋の蛇腋のあまさが重さなり
こめかみが知る秋風の千の舌
穂草波出だしはスチールドラムから
黒を経てこの世の色の曼珠沙華
月光にいちばん深く濡るる死者
われを抱え川原なでしこまで来たる
稲妻を浴び身じろぎもせぬ生家
流亡の果ての野菊でありしかな
作者紹介
- 渋川京子(しぶかわ・きょうこ)
昭和9年9月23日生まれ。現在「頂点」「面」「明」に在籍。平成9年現代俳句協会新人賞受賞。平成23年現代俳句協会賞受賞。句集『レモンの種』、共著『俳コレ』。