あらかじめ誤っていた秋の断片についての
誰にも渡されなかった覚え書き 杉倉 葉
ラビリンス、花火を終えて目覚めよう
木曜の戦線墓前に置く詩集
綴音を与えあう 試験の日には
眠れ秋に火は手のひらに隠しつつ
誤字を湛えているね さよなら
すべての朝の睫の匂い
水の病がうつる夕暮れの肺
遠い街(断層として)兄がいた
季語から掠めとるゆるやかな敵意
さわやかに枝葉を濡らせ王の死後
杉倉葉
1996年生。
pabulum所属。フランツ・カフカアンソロジー『カフカと私』(11月の文学フリマ東京から発売開始)参加予定。