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クリーチャーズ 谷村はるか
筆圧はもともと強い方ながら申告書に書き込む「
雑収入 」鳥の羽根の雨滴を弾くあぶらほどの心の膜をもたなくて沁む
舗装路に爪の音ひびいてしまう人の間をゆく犬だから
鴨くるくる狂いの季節でないならば春が来る甲斐などなかろうが
客待ちのタクシー氏いま熟読の「週刊へらニュース」の
湖 の中十五秒の動画を十五分かけてマイ・ナロウ・バンド咀嚼してゆく
ぶち建てた高層ビルのテナントは空きだらけ、それでも陽はあたる
土地の樹になってもいいねなりたいね肩幅ぶんの雨うけとめて
青空は成分の色〈謙虚さ〉を補いなさい 注がれている
足音をひそめてももうふくろうの前後左右の聴覚のなか
作者紹介
- 谷村はるか
一九九八年より作歌をはじめる。現在「短歌人」「Es」同人。歌集『ドームの骨の隙間の空に』。
近日、和歌山県の地域新聞「紀伊民報」で、熊野古道を歩く短歌エッセイの連載が始まります。
クリーチャーズ 谷村はるか
- 投稿日:2012年03月30日
- カテゴリー:作品2012年3月30日号
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