売らない   松本秀文





売らない   松本秀文

――雉も鳴かなければ撃たれなかっただろうに

イノシシの襲撃の後に
殲滅
「涙を止めるものは涙でしかない」
巨人兵が動き回る世界猫の家
暴走する狂気ペストたちが
自らの手首を切断して
神様(仮)を嘲笑うc
 
地底の青空
えなりかずきの群れが
這う(這っていきましょう!
暗さと暗さ半漁人が結合して
血腥い場所が
聖なる裸体マリアのように
輝き出す(猿が残響の背後へと潜る
いつも語られるのは天国ゆーとぴあのことばかり(だよね
炭酸コカ・コーラが奥歯にシュミる季節
レインボーマンが
インドの山奥で修業している
B級の光栄(笑)
「無表情の卵になりすました詐欺集団と今日も闘うのだ!」
預言者X アポカリプスは素早く
忍者のように世界猫の家を動き回る
破壊者テロリストにやがて殺されるから
生きているうちに
あらゆる場所に花束と眩暈とウルトラマンを
(愛のある)光線スペシウムのように注いで
そして
英雄はあらゆる場所から消えて
生まれ変わる(回れよ、時代!
警報装置サイレン
詩語みにくさ
 
黒いコックピットの中
警報装置サイレン

残酷な運命のように
静かに鳴る(サイレントモードです
詩語みにくさたちが戦争のように騒ぐ
「常にパニックを起こすな!」
循環する絶望希望の歯車を
過剰な野蛮さで掬う小人トマトたちの影
安全助かる」のない場所では「救済助けて」が流行する
破壊者テロリストが鳥のように
行間を飛んでゆく
「あらゆるものは緩やかに死んでゆく」
 
仮想包茎日本語の教室」と呼ばれるビル(♀)が
壊滅しかけた「ぼくらの商店街シャッターアイランド」に
記憶を抹消する施設リカバリーでリハビリ―として
人間カフカのように聳える
 
E子「すみません、わたしの詩を読んで下さい」
Y男「あ、何?」
E子「詩を読んでいただけないでしょうか?」
Y男「え?詩?」
E子「はい」
Y男「てか、何?」
E子「もし読んでいただけるなら、HもOKです」
Y男「バカヤロウ、ってか、あのさ、俺ってあれじゃん、俺は俺じゃん、だから、何つ~か、つまり、本もまともに読
んでないじゃん、え?何て言うか、あの、あのさ、たぶんさ、え?ガチで分からねえよ、みたいな感じ」
E子「H出来ますよ」
Y男「俺は俺じゃん、みたいな、え?その~、Hはしたいっつ~か、するんだけれども(笑)、みたいな、そんな、ね、
その、お前さ、ってどうなん、リアルに、ね、その、詩なんてさ、どうでもいいじゃん」
E子「いえ、詩を読んでもらいたいだけで、セックスはどうでもいいんです。正直そっちの方にはあまり興味ないんで」
Y男「へ?あ、そ~なんだ、あ、何かそういうのってさ、詩ってな~に(笑)、え、その、何だ、ポエムか、バカヤロウ(笑)、
そのさ、それって、リアルに増えてるの?みたいな、ね、その、何だろ、そういうのって、「あたしカッコイイ」とか、
ね、思ったりすんのかな~、俺は俺だからね、なんてね(笑)」
E子「詩を書いてるとか、やっぱりひきますか?」
Y男「え?そりゃあ、ね、ぶっちゃけ、さ、そうだろ(笑)、何か「セックスしたい」とかの方が、ね、正直楽じゃね、
みたいな、俺は中卒だったりさ、ね、だから、そこはさ」
E子「そういう学歴とか関係ないと思うんですけど、ただ詩を読んで欲しくて」
Y男「ぶっちゃけさ、ね、読んでもらわなくてよくね(笑)、って、そう、俺という俺という俺が読まなくてよくない?
ね、だから、その、どうだろ、(笑)、ごめん、ちょっと俺が俺らしくおかしくなって、ってか、てめえが好きで書いて
るだけだろうが、このアマ、ボケ、カス、ね」
E子「詩をバカにするんですか?殺しますよ」
Y男「お、マジでキモいわ、は、何だてめえ、キレる世代ってか、あ~、そ」
E子「読んで下さい。何でもしていいですから」
Y男「あ~、も、やだやだ、めんどくせ~メスだな。おらっ」

 
映像の川シネマの彼方へを背景に
太陽は
突然間違えてしまう
人間を溶かして
笑ってしまう(そうなのね
「壁に耳をつけるバカがいるかい!」
水たまりの筒井道隆の勢力が
武家屋敷の中で「真実クリトリス」を追い詰める
「障子に目をつけるバカがいるかい!」
 
瀕死NEWS(23:59~0:00)
「愚民の皆さん、こんばんは。茫洋とした場所で茫洋とした坊主が茫洋とした屏風に茫洋とした坊主の絵を茫洋と描きました。それがどうしたというのでしょう。今日も貴様らにはもったいない程うつくしい夜空が広がっています。ニュースをお送りいたしました」
ニュースキャスターの自爆山じばくやま早苗さなえ(35)の
娘の臍から両性具有者イツカハボクラモの群れが出現する
愉快なパントマイムをし続けるリスが笑う
 
散文的だ!
散文的だ!
散文的な風土に
流れる風は
未来を孕まずに
過去ばかりが
「おかわり」を言い続けて
分身カラスたちがアルバイトを探す
この「なう」という血塗られた敗北
手榴弾が
蛇のように街をパレードする(地獄の三分間
 
肉体のない呟きついーとたちが
必死ですき家の牛丼を食べて
全て終わった後のようないい表情 (韓流整形
トイレの蛇口から菩薩を流しっ放しにする
「勇者よ!銃口を突き付けられたまま詩を語れ!」
田螺が友達友情保険を殺す計画を立てている
 
さむい口語の時代の片隅で
片付けられないことを
片付けられないまま苦しむ男女バカがいて
世界猫の家男女バカを愛おしく想い
男女バカ世界猫の家を徹底的に憎み
「重力から逃げたウサギの仕業らしいぞ」
三日月(欠けたものはどこへ
中洲のラヴホテルは
にわかせんぺいのように笑う
 
第五十回「現代詩帝国顰蹙博覧会ここでは恥をかくことが「善」となる訳でございます」で
唯一
一匹の猿だけが「常識みんなのうた」を披露して
「最大の顰蹙グランプリ」を獲得した
「木から下りた奴らと一緒にするな!」
 
中学生の愛國忠臣あいこくただおみ(14)は
充電された「私」というiPhoneに
戦争讃美歌 (忘れられた日本人ばかりを流して
「俺俺俺OH!」というアプリにハマり
啄木のような注射針の下で
自慰てめえに忠実に生きている
「生きているだけで奴隷ぱっぱです」
 
現代詩人が売れない詩を売りながら
全く売れる気配がないので(笑)
体力UP ドリンクで滋養強壮してばかりいる
「君はたぶん死んだ熊ではなかろうか」
仕舞いには
「売らない」と強がるアホらしさ(しゃぼん玉飛んだ
アジアのどこかで今日も詩人は殺される
 
神様(仮)が芸人を目指す時代を生きる
我ら人類(そんなの嘘ですよ
野性の実践「文明」を「災害」と認識する眼差しはどこかで猿に奪われた
つまり
誰もいない井戸の底で
魂は居場所を持てず
質量なき物質百年の孤独を真似たまま
物質百年の孤独いつまでも野蛮で(野蛮だってば
蘊蓄の行列クラウドに収納された抒情の嘘を
宛名のない精液で
世界猫の家にうっすらと記して
顔のない幼児キリスト
星のように産み落とす
 
 
言葉の癌
 
 
星が降る夜
子犬たちは
銀河の隣にある公園で
紙飛行機を
そっと飛ばしている
風は吹かず
静かな時間が流れる

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「作品2012年5月25日号」の記事

  

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