胡乱な力 生沼義朗

胡乱な力 生沼義朗

がま口の口にあらざるところから口開いてきて硬貨は洩れる

そういえば、食べ物購うときにしか主に使わぬ財布なりけり

レシートとファストフードの割引券もていずこまで膨らむ財布

労働はそんなに酷か 財布には大田胃酸とノーシンもあり

残金をやたら気にする生活は木馬で荒野を旅するごとし

金だって原発だって同じこと、つまり胡乱な力なるらむ

鉄道に今日も命が消えている。鉄とは金を失うと書く

〈金のため〉が大義にならず〈仕事のため〉が大義になるあたりよりおかしい

何を今さら、という声聴こゆさりながらそこで躓くゆえ仕方なし

あたらしき財布購う またしばらくこれがあらゆるものを支える

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「作品 2011年9月30日号」の記事

  

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