第10回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載 何村俊秋一人八百長相撲 何村 俊秋

第10回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載
何村俊秋一人八百長相撲
何村 俊秋

理想に生きて、思想に殺されるのは、バカバカしい。
野田秀樹「贋作・罪と罰」

肘としてぼくを曲がつてゐるものの冷たさ いま、君に遭ひたし

雨になりさうだね雨にならないね何者にもなれなくつていいね

悲劇つて信じてゐたいぼくたちよ冷たい水で手を洗ふのだ

しあはせもかくあるべし、と ピーラーに剥かるる蕪の皮のしらしら

茹でられてはうれんさうのこーんなにも、こんなにもああ淫らなりけり

ぼくたちのありえなかつた青春の湘南台文化センターのにほひ

あやまちはシヤンプー二回 まなうらに回るメリーゴーラウンドまはる

エンドレス・エイトは4番目が好きと ぬるい缶チユーハイに水滴

宇宙にも立ち食ひ蕎麦はあるだらう だから結婚してくださいつて

痒いのか分からぬ(どこが)搔いてをりそして終わりぬ一日(ひとひ)がここに

なんかまうぜんぶだうでもよくなつてなつちやうまでの一歩なんだな

人生も俺を赦しちやねえだろなあ目え瞑つても見えんのだよなあ

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