吸血鬼 黒川俊郎
吸血鬼目覚めてゐたり流れ星
あめんぼの脚を絡めて散りにけり
廻らせて抽象はいま蜘蛛の囲に
毟られた故は黙せり羽抜鶏
蚊一匹われ一人ゐて不仲なり
これ以上かすかにできず虹の橋
紙魚暮らすやや難解な虚構にて
ニンゲンは襞で成り立つ秋の波
折れた矢のまぎれてゐたる薄原
天高く回りて見せし腹の裏
作者紹介
- 黒川俊郎(くろかわ・としろう)
1945年生まれ。本名・丸亀敏邦。「面」同人・「かいぶつ句会」同人・「河」同人・「大きな羊の会」代表。共著『俳句の一撃』(講談社)、電子書籍句集『時間の襞』(ハーグル出版) 。墨彩画家・ハンコ作家。(社)俳人協会会員・(社)日本美術家連盟会員。武蔵野美術大学卒業。現在、武蔵野美術学園学園長。